Windows 11に移行できない場合、どうすればいい？

「Windows 10のサポートが終了したけど、うちのパソコンは古くてWindows 11に対応していない…どうすればいいの？」と困っていませんか？

また、「Windows 11に移行する前に、何を準備すればいいのかわからない」という方も多いのではないでしょうか。

ご安心ください。Windows 11に移行できない場合でも、いくつかの代替手段があります。また、移行する場合も、事前にしっかり準備をすれば、トラブルなくスムーズに移行できます。

この記事では、以下の2つのテーマについて、初心者の方にもわかりやすく解説します：

• Windows 11移行が困難な場合の代替手段（5つの選択肢）
• Windows 11移行前に必要な準備事項（確認すべきポイント）

あなたの状況に合った最適な選択肢を見つけましょう。

【第1部】Windows 11移行が困難な場合の5つの代替手段

現在使用しているPCがWindows 11の最小システム要件（TPM 2.0、特定のCPU世代など）を満たしていない場合や、すぐに新しいPCへの買い替えができない場合、以下の5つの代替手段が考えられます。

代替手段1：Windows 10の延長サポート（ESU）を活用する

これは、Windows 11への移行が間に合わない場合に、セキュリティリスクを一時的に最小限に抑えるための有償の延命措置です。

ESUの概要

ESUの費用と期間

こんな方におすすめ

• 「新しいPCを買う予算がまだ確保できていないが、1年以内には買い替えたい」という方
• 「Windows 11への移行準備に時間がかかるので、その間だけセキュリティを確保したい」という方

注意点

ESUはあくまで一時的な猶予措置です。新しいPCへの買い替えや代替OSへの完全移行が完了するまでの時間稼ぎとして捉え、ESUの期間を利用して、Windows 11への移行や新しいPCへの買い替え計画を立てることが推奨されています。

代替手段2：代替OS（Linux、ChromeOS Flex）に切り替える

古いハードウェアを廃棄せず、無料で使える代替OSに切り替えることで、PCの寿命を延ばし、環境負荷の低減にもつながります。

① Linux（Ubuntuなど）

Linux（リナックス）は、無料のオープンソースOS（誰でも自由に使える、改造できるOS）です。

こんな方におすすめ

• インターネット閲覧、メール、文書作成などの基本的な用途だけ使う方
• 新しいことに挑戦するのが好きな方
• 環境に優しい選択肢を求める方

注意点

Windows専用のアプリケーションやゲームはLinux上で直接実行できない場合があります。例えば、Microsoft OfficeやAdobe Photoshop、多くのWindowsゲームは動作しません（代替ソフトや互換ソフトを使う必要があります）。

② ChromeOS Flex（クロームオーエス フレックス）

ChromeOS Flexは、Google社が提供する無料のOSで、Windows 11のシステム要件を満たさない古いPCを再活用する選択肢として注目されています。

こんな方におすすめ

• 利用目的の大部分がウェブブラウザで実行できる方（ネット閲覧、Gmail、Googleドキュメント等）
• Googleのサービスを多く使っている方
• 古いPCを軽快に使いたい方

注意点

インストール前にGoogleの認定モデルリストを確認することが推奨されています。また、Windows専用のソフトは基本的に使えません。

③ macOS（Macに移行）

AppleのMacコンピュータへの移行も選択肢の一つですが、Windows PCと比較してマシン自体が高額になる傾向があります。

こんな方におすすめ

• すでにiPhoneやiPadを使っている方（連携が便利）
• デザインや映像編集など、クリエイティブな作業をする方
• 予算に余裕がある方

代替手段3：ハードウェアを買い替える/最新化する

移行が不可能である場合の最も確実な対策は、Windows 11搭載の新しいPCに買い替えることです。

① 新しいPCの購入

古いPCがWindows 11の最小システム要件（TPM 2.0、特定のCPU世代など）を満たしていない場合、これが最も確実でリスクの少ない対応策です。

② ハードウェアの更新（パーツ交換）

一部のシステム要件（例：メモリやストレージ）のみが満たされていない場合は、必要なパーツを追加・交換することで対応できる可能性があります。

ただし、CPUやTPM 2.0が要件を満たさない場合は、PCの買い替えが推奨されます。

③ レンタル/リース（法人向け）

法人顧客の場合、PCのレンタルやリースを検討することで、初期投資を抑えつつ最新のWindows 11搭載PCを導入し、円滑な移行を実現できます。

代替手段4：非公式な方法でWindows 11を利用する（非推奨）

システム要件を満たさないPCでWindows 11を利用する非公式な手段もありますが、これらはMicrosoftによって推奨されておらず、セキュリティリスクや動作不安定のリスクを伴います。

① 要件をバイパスしたインストール

レジストリの編集やRufus（ルーファス）などのツールを使って起動可能なインストールドライブを作成し、TPMチェックなどをバイパスしてWindows 11をインストールする方法が存在します。

② 軽量カスタムビルドの利用

Windows 11から多くの機能やアプリケーションを削除し、要件を満たさない古いシステムでも動作するようにカスタマイズされた「Tiny11 Builder」のようなツールが存在します。

注： これらの方法は、セキュリティリスクや法的な問題を伴う可能性があるため、自己責任で行う必要があり、一般の方には推奨されません。

代替手段5：仮想デスクトップ・クラウドサービスを活用する（法人向け）

古いPC自体をクライアントデバイス（画面を見るだけの端末）として使い続けつつ、最新のOS環境を利用する手段です。

仮想デスクトップの特徴

こんな方におすすめ

• 企業や組織で複数台のPCを管理している場合
• IT部門があり、仮想デスクトップの管理ができる場合

注： 一般の個人ユーザーには技術的ハードルが高いため、主に法人向けの選択肢です。

【第2部】Windows 11移行前に必要な準備事項

Windows 11へのスムーズな移行を実現するためには、事前の確認事項と準備作業を計画的に実施することが極めて重要です。

準備を怠ると、アップグレード中の予期せぬトラブル、データ消失、および移行後のソフトウェアの互換性問題により、業務や日常利用に重大な支障をきたすリスクがあります。

準備1：互換性の確認と移行方針の決定

Windows 11への移行を決定するにあたり、まず既存のPCがアップグレードの要件を満たしているかを確認することが必須です。

① PCがシステム要件を満たすかの確認

Microsoft公式の「PC正常性チェックアプリ」を使用して、最小システム要件を満たしているかを自動で診断します。

確認方法： Microsoftの公式サイトから「PC正常性チェックアプリ」をダウンロードし、実行してください。

② Windows 10のバージョン確認と更新

Windows 11へアップグレードするには、Windows 10を最新バージョン（Version 22H2など）にしておく必要があります。

確認方法： 「設定」→「更新とセキュリティ」→「Windows Update」で最新の更新プログラムをインストールしてください。

③ 移行方針の決定

準備2：データの保護と復元手段の準備

アップグレード作業中に予期せぬトラブルや電源障害が発生した場合、データが失われるリスクがあるため、データのバックアップと復元手段の確保は必須です。

① 重要データのバックアップ

外付けHDD、USBメモリ、SSD、またはクラウドサービス（OneDriveなど）を利用し、重要なファイル、ドキュメント、写真、設定、アプリの一部をバックアップします。

② 回復ドライブの作成

システムが正常に起動しなくなった場合に、システムを修復・復元するために回復ドライブ（USBメモリを使用）を事前に作成しておきます。

作成方法： 「コントロールパネル」→「回復」→「回復ドライブの作成」から作成できます。

③ 再セットアップメディアの作成

アップグレード中に重大な問題が発生し、システム全体を購入時の状態に戻す（再インストールする）必要がある場合に備え、再セットアップメディアを作成しておきます。

④ ID・パスワードの整理

買い替えやクリーンインストールを伴う場合、各種アプリやツールのログインID・パスワードをメモしておくなど、情報を事前に確認・記録しておきましょう。

準備3：ソフトウェアとハードウェアの互換性検証

Windows 11にアップグレード後、業務で使用するアプリケーションや周辺機器が正常に動作しなくなるリスクがあるため、互換性の確認は必須です。

① ソフトウェアの互換性確認

現在使用中のソフトウェア（特に業務用ソフトや古いアプリ）がWindows 11に対応しているか、各開発元の公式サイトで確認します。

② 周辺機器の互換性確認

プリンター、スキャナー、特殊な入力デバイスなどの周辺機器がWindows 11に対応しているか、メーカー公式サイトで互換性情報を確認します。

③ ドライバーの更新

無線LANやBluetoothなどのデバイスドライバー（周辺機器を動かすためのソフト）を最新バージョンに更新しておくと、アップグレード後の接続不良などのトラブルを防げます。

④ 削除される機能の確認

Windows 11へのアップグレードに伴い、Internet Explorer、Cortana、タイムライン、タブレットモードなど、一部の機能や仕様が削除または変更されるため、代替手段を検討します。

Internet Explorerを使用していた場合は、アップグレード前に「お気に入り」などをMicrosoft Edgeに移行する必要があります。

⑤ セキュリティソフトの一時アンインストール

一部のサードパーティ製セキュリティソフトは、アップグレードのインストールプロセスを妨げる可能性があるため、アップグレード前に一時的にアンインストールし、完了後に再インストールすることが推奨されます。

準備4：環境の整備と実行準備

実際のアップグレード作業を安全かつ円滑に進めるために、物理的・論理的な環境を整えます。

① ストレージ空き容量の確保

Windows 11のインストールには最低64GBのストレージが必要ですが、アップグレード作業にはさらに空き容量が必要です。

9GB以上が最低ラインですが、30GB〜40GB以上の空き容量を確保することが推奨されます。

② TPMとセキュアブートの有効化

要件を満たしていてもBIOS（UEFI）設定でTPM 2.0やセキュアブートが無効になっている場合は、アップグレード前に有効化する必要があります。

確認方法： パソコン起動時に特定のキー（F2、Delなど、メーカーにより異なる）を押してBIOS画面を開き、TPMとセキュアブートの設定を確認します。

注： BIOS設定は専門的な知識が必要なため、不安な場合はパソコン教室や専門業者に相談してください。

③ 周辺機器の取り外し

アップグレード中のトラブルを避けるため、必要最低限の機器以外（プリンター、外付けストレージなど）はすべて取り外すことが推奨されます。

④ 電源の確保

ノートPCやタブレットPCの場合、アップグレード中に電源が切れるとシステムが不安定になるリスクがあるため、必ずACアダプタを接続し、電源供給を確保します。

⑤ 安定したインターネット接続

アップグレードには大容量データのダウンロードが必要なため、安定したインターネット接続（可能であれば有線LAN）を用意します。

Homeエディションでは初期セットアップ時にインターネット接続とMicrosoftアカウントが必須です。

⑥ 時間の確保とスリープ無効化

アップグレード作業は1時間から2時間半程度かかるため、業務に支障のない時間に余裕がある時に開始します。

また、アップグレード中にスリープ状態になると中断する可能性があるため、スリープ機能を一時的に無効にし、ノートPCの場合はディスプレイを開いたままにします。